Art Reportーアート鑑賞録ー

美術館・博物館・ギャラリーでの展示鑑賞録。

絆に色はあるのか「絆王子と無限の一歩」

多摩映画祭TAMA NEW WAVEある視点―Vol.1―の中から
「絆王子と無限の一歩」を見ました。
 
不登校がテーマの本作、娘が不登校だったこともあり
繰り出されるセリフから現場をすごく丁寧に取材されたことが伺えます。
明確な理由があって行かれなくなる子もいれば、
突然体が動かなくなり本人にもどうして行かれなくなったのかわからない子、
学校よりも夢中になってやりたいことのある子、
その子それぞれなので本当は通り一遍ではいかないのに
周囲の持つ常識や理想や正義に当てはめようとして余計に苦しくさせてしまう。
 
本音を言うと「絆」とか「寄り添う」という言葉は大嫌いな部類で
「いやいやそんな簡単に使うなや」と思っている私ですが、
本作を見ると言葉は悪いけど便宜上
その言葉の選択がやむを得ないかもしれないと思える部分があるのは
綿密な取材による説得力かもしれません。
 
正解のない問題ですが終盤の「絆は見えなくなる」という解釈に辿り着いたのは秀逸だと思うし、
単なる大団円で終わるのではなく、これからも一進一退が続くであろうことは想像がつくけれど、
今、目の前には無限の世界があってそこに踏み出すための手伝いはするよ、
応援しているよ、というメッセージが込められていたと思います。
 
ただ気になったのは登場人物が2人になるシーン、
あと半歩か一歩引きで撮られても良かったのではないかというところがいくつか。
個人的な感覚と好みの問題かもしれないけど
取り巻く空気も含めた絵作りがあっても良い気がしました。
 
ともあれ、とても難しいテーマに果敢に挑戦された監督はじめ
キャスト、スタッフの方々の心意気に拍手を送ります。良い作品でした!