Art Reportーアート鑑賞録ー

美術館・博物館・ギャラリーでの展示鑑賞録。

大正初期のモダンな版画展「浮世絵モダーン」。

まず、開催されている場所が
失礼ながらあまり有名ではないのではないかと思います。
町田駅から歩いて15分くらいでしょうか。

町田市立国際版画美術館」。
版画を中心とした美術館です。

ここを訪れるのは実は2度めなのですが
ゆったりした広さは、有名な美術館にも
引けを取らないんじゃないかしら。

展示の出品総数がおよそ300点というところからも
おわかりいただけるのでは。
(版画なので大きな作品がほぼないというのもありますが)

浮世絵というと江戸時代の美人画や風景画がイメージされますが、
今回は大正初期の作品が中心でした。
大正=モダンって感じですよね!

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ちょっと意外だったのは、伊東深水日本画家として認識してたんですけど
浮世絵師、版画家としても名を馳せてるんですね。
ちょうど上のチラシに使用されている「対鏡」は深水の作品です。
版画になると女性の線が骨太に感じるのは気のせいかな。

たくさんの美人画の中でも気になったのは小早川清
写真撮影がOKだったこの「近世時世粧ノ内 六 口紅」は
江戸川乱歩の小説の表紙にしてもいいような感じ。

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他にもダンサーを題材にした作品もあって
どの作品も好みでした。

あとおすすめなのが、
数年前に弥生美術館で初めて知った橘小夢
この人の作品は正気じゃないです。
お蝶夫人」「沢村由之助」「唐人お吉」の
3点が展示されていますが毒気というか
狂気というか妖気というか好きですね。

先ほど小早川清の絵が
江戸川乱歩の表紙に合いそうと書きましたが
実はこの橘小夢は江戸川乱歩と親交が深かったらしく
この展示には出品されていませんが、
乱歩の小説を題材に描いた作品も残っています。


また、風景だと去年、損保ジャパン日本興亜美術館で
生誕140周年の展示があった吉田博でしょうか。
「瀬戸内海集 帆船」の朝・午後・夕が良かったです。
これ同じ版を色を変えたり陰影を変えて刷って
それぞれの時間帯を表しているのかなぁ。

川瀬巴水も良かった。「東京二十景 芝増上寺」は
門の赤と舞う雪にときめきました。

しかしどの作品も木版画でここまでの色や雰囲気が出せるなんて
絵師と擦り師の力量がぴったり合わないと無理なのではないかと思うけど
擦り師の名前は残らないんですかね。
ちょっと可哀想な気も・・・。

版画作品に触れたことのない人も
この機会にぜひ見てみてはいかがでしょう。
美術館の隣には大きな公園もあって
ちょっとしたお散歩コースとしてもイイと思います!

町田市立国際版画美術館

会期:2018年4月21日(土)~ 6月17日(日)
※前期(~5月20日)・後期(5月22日~)で一部展示替えがあります。
開館時間:平日10:00~17:00(入場は16:30まで)
     土日祝10:00~17:30(入場は17:00まで)
休館日:月曜日 4月30日(月・祝)は開館し、5月1日(火)は休館。

入園料:一般800円(ぐるっとパスで無料)

交通:小田急町田駅より 徒歩約15分
   JR 横浜線町田駅(中央口)より 徒歩約15分
   JR 横浜線町田駅(ターミナル口)より 徒歩約12分

hanga-museum.jp