Art Reportーアート鑑賞録ー

美術館・博物館・ギャラリーでの展示鑑賞録。

図録が買い!「プーシキン美術館展」。

モスクワのプーシキン美術館から
フランスの近代風景画65点が展示されている
プーシキン展。

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モネ、ロラン、ブーシェ、コロー、ルノワール
ピカソセザンヌ、ゴーガン、ルソー、といった
日本人にもお馴染みの名前がずらり。
難しいことを考えず、
肩ひじ張らず愉しめるのではないでしょうか。

元々絵画は宗教や神話がテーマとなっていて
風景はあくまでもその背景、というものだったのが
18世紀後半ごろに絵画を眺めるように
景色を眺めるというのが定着したそうです。

ただそれは、見た通りのありのままの景色というよりも
「かくあるべき」と考えられた理想の風景で
必ずしも正確な風景ではなかったとか。

カミーユ・コローなどは自然を観察しても
細部は描き込まずに自身が感じた空気を優先して描き、
ピカソは同一の画面上に上からや下からなど
複数の視点が混在しています。

また、ルソーは「植物園の温室より遠くへ旅したことがない」と言う言葉どおり
植物園・動物園・図鑑・雑誌などから独学で絵を描き
鮮やかな熱帯の世界は想像の世界です。

中でも目を引いたのが、
ルイジ・ロワールの「パリ環状鉄道の煙(パリ郊外)」。
この絵、すごく不思議です。とても大きな絵ですが、
ちょっと距離を置いて見ると
まるで自分がその絵の中にいるんじゃないかという錯覚を起こします。
左斜め、正面、右斜め、どこから見てもそこに入り込んでしまう。
汽車は描かれていないのですが、
空全体を覆うような煙が汽車の大きさを物語ります。
この絵は必見!

「写真」は良くも悪くも目の前の事実(真実ではありません)を
すべて撮ってしまいますが、絵画は自分の意思で
描かない選択も描き足す選択もそのままの選択もできます。
その時代時代、画家それぞれにその選択は委ねられ
今、私たちの目の前で「君はどう見るかね?」と
その答えをワクワクとしながら待っているのではないでしょうか。
発想の自由さ、手法の工夫。試してみようと思う探究心。
たくさんの便利なものがある今の時代の私たち。
負けていられないなー。

そして今回、図録がとってもオススメ!!
今までも展示で手に入れた図録は数々ありますが
これはピカイチです。

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装幀が素敵だし、何といっても読みやすい。
実際の展示で割り振られていた章ごとの説明、
各作品・アーティストの詳細な解説。
巻末にある寄稿文やコレクターについて、
また風景画についてのおすすめガイドブックの紹介など盛りだくさんです。
帯が4種類あり、好みのモノが選べます。
コレは買わないと後から後悔するヤツだ、と奮発しました!

 ぜひ風景画のルーツを訪ねてみてください。

東京都美術館

期間:  2018年4月14日(土)~7月8日(日)
開館時間:9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)金曜日は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)
休館日: 毎週月曜日
入園料: 一般 1,600円 ぐるっとパス掲示で100円割引。
交通:  JR「上野駅」公園口から徒歩5分
     京成線「京成上野駅」から徒歩10分
     東京メトロ銀座線、日比谷線上野駅」から徒歩10分

www.tobikan.jp